NEWS

ケータラー往復書簡No.01「綾里漁協の塩雲丹」

catering for me! に参加するケータラーの往復書簡シリーズ。
日々の考察や、気づきなど、それぞれがリレー形式で綴ります。
リレー第一周目は「最近食べて美味しかったもの」。
中山晴奈さんから、モコメシさんへ。
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

「綾里漁協の塩雲丹」

自粛期間からはじめたケータラーの料理デリバリーのしくみも早4ヶ月ですね。年末に向け、また新しいケータラーのメンバーも増えつつあり、とても楽しみになっています。モコさんもいつもどうもありがとう!

モコさんは、美味しい!と感じるときのポイントってどこですか。わたしは誰かが私のために作ってくれたという事実だったり、手にしたものが手間暇かけて作ったとわかってそれが愛おしいと思ったときです。今回は、後者のおいしさについて、最近食べた綾里漁協の塩雲丹の話をしたいと思います。

綾里は岩手県大船渡市三陸町に位置するのですが、このあたりはリアス式の地形を生かして牡蠣の養殖や定置網、また外洋に向かって捕鯨船に乗るなど、海の生業がたくさんある土地です。夫婦で船に乗って漁に出かけるなど、小さな生産者が多いのも特徴です。

震災の後、宮城県石巻市の雄勝という地域に入らせてもらった時、浜の女性たちに食べさせてもらったものの一つが塩雲丹でした。宮城から岩手までのリアス地域は獲れるものも似ていますが、色が悪かったり形が崩れてしまったりして、市場価値がつきにくい雲丹を、塩を振って干しただけのシンプルなもので、リアス全域の浜の町で作られています。絶妙なタイミングで干したり塩を振ったりして仕上げるために、作り手によって味はバラバラです。またほとんどが水分である雲丹を干してしまうので、できあがりの量は本当に少量となり、流通させるのが難しいケースがほとんどです。ミョウバンを入れず、塩と浜の風で仕上げる塩雲丹は、生雲丹よりも濃厚で、旨みが増えていて、一口食べさせてもらった時の悶絶ともいえるその感動は忘れられないものでした。浜の女性たちも今年の味はああだこうだと、違うことが前提で仕上げるため、毎年のお便りのような加工品です。自家用やおすそ分け用につくるものなので、浜のお母さんたちと交流がないとなかなか口にする機会もありません。わたしも浜に関わる仕事が終わり、行く機会がなくなってしばらく遠のいていたのですが、夏から秋にかけての雲丹のシーズンになると、こころの隅に濃い黄色をして、スノコに干されている塩雲丹の姿が毎年思い出されるのでした。

そうこうしていたら、知り合いが綾里漁協の女性たちと試験的に塩雲丹を作り、販売するというではありませんか。さっそく懐かしさもあって取り寄せてみました。冷凍されて届いた塩雲丹は、塩分もほどほどに濃厚で、震災後に通った浜の女性たちや浜に向かって吹いている風を思い出す味でした。そしてあっという間に売り切れて、今年は手に入らなくなってしまいました。このcatering for me! をはじめて、感謝していることのひとつに、せっかく知り合いになってもなかなか通い続けることができない各地の生産者さんに、これを機に声をかけて食材を取り寄せさせてもらい、それをまた尊敬するケータラーの人たちに調理してもらう楽しみができたことです。自分だけでは料理というかたちにしきれない生産者さんへの思いを、ケータラーの皆さんの力も借りて、かたちにしてもらっているような感覚があり、私としては幸せなプロジェクトだなぁと思っています。千葉豪さんのめかぶがもモコメシの水餃子になったのも、すごくうれしかったです。綾里漁協の塩雲丹は、ごはんにのせて我が家のお腹の中へと消えましたが、これからも思いのある素材がケータラーたちの手によってすてきな料理に変わっていくのが楽しみです。